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オッペンハイマー 科学の発展と、そこに追いつけない人間…メッセージが重い


【🎦10 2024/3/30鑑賞】 ドイツで理論物理学を学び、博士号を取得したJ・ロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィ)は、アメリカへ帰国する。第2次世界大戦中、極秘プロジェクト「マンハッタン計画」に参加した彼は、世界初の原子爆弾の開発に成功する。しかし実際に原爆が広島と長崎に投下されると、その惨状を知ったオッペンハイマーは苦悩する。冷戦時代に入り、核開発競争の加速を懸念した彼は、水素爆弾の開発に反対の姿勢を示したことから追い詰められていく。

 「原爆の父」と呼ばれたアメリカの物理学者、J・ロバート・オッペンハイマーを描く人間ドラマ、。ピュリッツァー賞を受賞したカイ・バード、マーティン・J・シャーウィンによる伝記を原作に、人類に原子爆弾という存在をもたらした男の人生を描く。


 アメリカの天才的な理論物理学者、第二次世界大戦中にロスアラモス国立研究所の所長を務め、原子爆弾の開発・製造を目的としたマンハッタン計画を主導し、のちに原爆の父と呼ばれる存在になるオッペンハイマー。(この「原爆の父」については、この映画では、ギリシャ神話の男神、天界の火を盗んで人間に与え、罰せられたプロメテウスの逸話でもって描かれる)
戦後、10月にトルーマン大統領とホワイトハウスで初対面した際、「大統領、私は自分の手が血塗られているように感じます」と語ったが、トルーマンはこれに憤慨、彼のことを「泣き虫」と罵り、二度と会うことは無かった。
1947年にはアインシュタインらを擁するプリンストン高等研究所所長に任命され、1966年まで務めたが、彼は、原爆の破壊力や人道的影響、倫理的問題に関心をもち、核兵器は人類にとって巨大な脅威であり、人類の自滅をもたらすと考えたため、核軍縮を呼びかけ、原子力委員会のアドバイザーとなってロビー活動を行い、かつソ連との核兵器競争を防ぐため働いた。


 これに加え、冷戦を背景にジョセフ・マッカーシーが赤狩りを強行したことが、オッペンハイマーのキャリアに大きな打撃を与えた。
妻キティ、弟フランク、フランクの妻ジャッキー、およびオッペンハイマーの大学時代の恋人ジーン・タットロックは、アメリカ共産党員であり、また自身も党員では無かったものの、共産党系の集会に参加したことが暴露され、ソ連のスパイ疑惑を受け、聴聞会で追及を受ける。
1954年4月12日、原子力委員会はこれらの事実にもとづき、オッペンハイマーを機密安全保持疑惑により休職処分(事実上の公職追放)とした(オッペンハイマー事件)。


 そんな天才的な物理学者にして、「マンハッタン計画」を主導した原爆の生みの親オッペンハイマーの半生を、鬼才クリストファー・ノーランが映画化した3時間の長尺。
「量子力学の研究者として天才的な視点を持つも、人類を滅亡させる兵器を作ってしまった主人公」という面と、「第二次世界大戦後の赤狩りの公聴会から、オッペンハイマー事件の首謀者ストローズとその顛末」。
この二つの視点について、過去へとフラッシュバックし、現在を描き、オッペンハイマーの生涯の時系列が交錯する形で展開させて、栄光のはかなさや後悔の重さを強調するかのよう複雑な時間軸演出はほんとうにノーラン作品だ。
実話映画ではあるはずが、とてもサスペンス的な演出になっていて、伏線が多くありながらもそれらがしっかりと回収されてお腹に落ちていくいく手法はさすが!



 「バーベンハイマー(Barbenheimer)騒動」のせいで、日本公開前から一部の的外れな偏った批判が先行してしまったのは残念であり、広島・長崎の原爆被害の実態を彼は目にしていないので「描かなかった」という演出上の選択についても批判があるのは、この作品の趣旨としては違うのではないかと感じた。
それよりも、時として諸刃の剣となりかねない才能や探求心の危うさ、最先端技術が創造主の手を離れて政治的に利用されてしまうことの怖さを、ノーラン監督が見事に描ききったと評価したい。
科学の発展と、そこに追いつけなくなった人間、その歴史を振り返る意味で重要なメッセージを持った映画ではなかったか。



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