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ある男 とらえどころのない不穏な空気感があふれる映画…


【🎦34 2022/11/26鑑賞】 弁護士の城戸章良(妻夫木聡)は、かつての依頼者である谷口里枝(安藤サクラ)から亡き夫・大祐(窪田正孝)の身元調査を依頼される。離婚歴のある彼女は子供と共に戻った故郷で大祐と出会い、彼と再婚して幸せな家庭を築いていたが、大祐が不慮の事故で急死。その法要で、疎遠になっていた大祐の兄・恭一(眞島秀和)が遺影を見て大祐ではないと告げたことで、夫が全くの別人であることが判明したのだった。章良は大祐と称していた男の素性を追う中、他人として生きた男への複雑な思いを募らせていく。

 平野啓一郎の第70回読売文学賞を受賞した小説「ある男 (朝日文庫)」を映画化、死後に別人と判明した男の身元調査を依頼された弁護士が、他人として生きた男の真実を追うという映画。


 ベルギーのルネ・マグリットの絵画「複製禁止」が主題的なモチーフで、いきなり神経が揺さぶられる。
「数年前、里枝は離婚を経て、子どもを連れて故郷に戻り、そこで出会った「大祐」と再婚。新たに生まれた子どもと4人で幸せな家庭を築いていた。
しかしある日、「大祐」が不慮の事放で命を落としてしまう。悲しみに暮れるなか、長年疎遠になっていた大祐の兄・恭一(眞島秀和)が法要に訪れ、遺影を見て「これ、大祐じゃないです」と衝撃の事実を告げる。
愛したはずの夫は、名前もわからないまったくの別人だったのだ……。」
と、ここまでが導入部なんだが、ここまでですでに、重厚感ある丁寧な演出によるからか、とりとめもない不穏な空気感があふれ、「どうなっていくんだこの映画!?」とまったく先の展開が読めない。

 妻夫木聡が演じる弁護士の城戸章良が登場してから、ようやく物語が転がり始めるが、真実を追い求めていく重層的なミステリー構造から、さらにアイデンティティの問題までが絡み出してきて、二重三重の構造となっていく。
不安定な存在感を見事に演じた窪田正孝、精神の揺らぎを変幻自在に演じる安藤サクラが、この作品の説得力となり、脇ではそれぞれのキャストが自分に与えられた役割を的確に演じきる。
その上で、自らのアイデンティティを喪失するかしないかというきわどく難しい精神状態を、妻夫木聡が繊細な演技で表現し、軸となる存在感となる。



 憲法第44条では「両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。」とされていて、また、例えば労働組合法の第5条「労働組合として設立されたものの取扱」の4項では「何人も、いかなる場合においても、人種、宗教、性別、門地又は身分によつて組合員たる資格を奪われないこと。」と定められていて、出自による差別を禁じている。
「門地」というのは家柄、人の出生によって当然に生じる社会的地位のことだ。
アイデンティティとは、「自分が自分であること、さらにはそうした自分が、他者や社会から認められているという感覚のこと」を言うが、他人から、または社会から自分のアイデンティティを揺るがさられる要素としては、「人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入」であり、加えて、国籍、性自認・性嗜好、容貌、障碍などや、加えて「親や家族の存在」による差別や区別、攻撃などがある。
この映画は、社会問題としてことさらに描いているわけではないが、その「自己」とは、「アイデンティティ」とは、またはそれらと現代社会との関係についての問いを投げかけていた。
そしてラストのエピソードについては、観る人によって、どう解釈するか、感情をどこに持っていくべきか迷うだろう。

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