「さがしもの」(角田光代)で片岡義男の世界を考え込む


 今日は「意味わからーん!急遽代打でゴルフすることに…なんでやねーん!」ってな日。
ゴルフ場のショップで、グローブにボールにティーにポロシャツを購入、ズボンはスーツのスラックス、靴とクラブは当然レンタル…。
スコアは…前半で今日こそ初めての120代と確信したのに(もしかしたらそれ以上??)、後半は砂遊びが過ぎてしまって、表彰式ではみなさんのために代打らしくの大活躍が出来たようだ~v(o ̄∇ ̄o) ヤリィ♪
で、今日は、「ゴルフなんてダサいこと死んでも俺は絶対にしない」と確信していた頃のことを思い出したネタ。

さがしもの (新潮文庫)
角田光代
新潮社


 片岡義男と言えば自分が高校生から大人になる前までの、1980年代前半頃に、読み漁っていて、かなり影響を受けた作家だ。(自分の昔のブログ記事で彼の作品を紹介している→「片岡義男」、「サーフィンのいい小説って」)
今でも時々ふと手にとって読み返すけど、今読んでみると…(この「…」が本日の主題)。

 角田光代さんの「さがしもの (新潮文庫)」というを、友人から貰ったので読んだ。
『「その本を見つけてくれなけりゃ、死ぬに死ねないよ」、病床のおばあちゃんに頼まれた一冊を求め奔走した少女の日を描く「さがしもの」。初めて売った古本と思わぬ再会を果たす「旅する本」。持ち主不明の詩集に挟まれた別れの言葉「手紙」など九つの本の物語。無限に広がる書物の宇宙で偶然出会ったことばの魔法はあなたの人生も動かし始める。』という、本にまつわる物語を集めた短編集だ。

 その中の一編に「だれか」という作品がある。

 「24歳の私が、恋人と行ったタイの小さな島でマラリアにかかった。海の見える部屋で一日じゅう寝ている私に、恋人が、バンガローの食堂に旅人が置いていった本を何冊か持ってきた。
その中に片岡義男の文庫本があった。
『なんで片岡義男なんだろう』
『片岡義男がどうこうでなくて、なんで彼は片岡義男を選んだのだろう。…突然私の頭のなかで、そのだれかははっきりとした輪郭を持つ。年の頃は二十七、八歳。彼は片岡義男の愛読者だったのだろう。彼の描く世界にあこがれ、彼の描く主人公に共感し、主人公がつぶやくせりふにうっとりしたのだろう。けれど高校を出、育った家を出、働きはじめ、彼は片岡義男から徐々に遠ざかる。現実は片岡義男的ではないし、彼もまた、片岡義男の主人公でもない。部屋のなかにはコンビニ弁当の空箱と、取り込んだままの洗濯ものが山を作り、片づけても片づけても、明日は空箱と洗濯ものを引き連れてやってくる。本なんかもうとうに読まない。読む時間がないわけでないけれど、読んだからどうだってんだ、と彼は思う。』
25歳のときに彼は恋をし、恋人が彼のアパートに時々やってきて家事をしてくれる。『結婚してもいいかな、と彼は思う。』
『けれど彼はふられてしまうのだ。おれのどこが悪かったのか教えてよ、と、彼は、最後の自尊心を守るべく、ぶっきらぼうに彼女に訊く。なんだかあなたって退屈なのよ、と彼女は言う。さようなら。』
『そしてまたひとりの生活が戻ってくる。生活はにこにこと彼の肩をたたき、台所をコンビニ弁当の空箱で埋め、トイレの床を陰毛だらけにし、洗濯ものの山をつくる』
『そんな生活のなか、彼は頭の片隅に、ある光景が浮かぶ。それはまるで遠い記憶のように淡く、けれど確固としてそこにある。』
そうして彼は南の島に、夏休みに有給休暇をプラスした10日間で旅にいくことにし、旅のチケットを買い求め、旅に必要なものを揃え、ふと本屋に立ち寄る。
『そして彼は文庫本のコーナーで、なつかしい背表紙に気がつく。ずらりと並ぶ赤い背表紙。その前に立ち、タイトルをしげしげと眺めていた高校生の自分。生活になれなれしく肩を組まれることもなく、意味不明な理由で恋人に去られた経験もなく、何かに強くあこがれて、そのあこがれの強度によって、あこがれに近づけると信じていたころの自分。』
『これだ、と彼は思う。何冊か手にとってレジに持っていく。レジスターにはじき出される数字を見ながら、けれど彼は違うところを見ている。澄んだ海と、雲のひとつもない高い空。ハンモックとサンオイルのにおい。』
『そのようにして片岡義男の文庫本はタイの島にやってきたに違いなかった。』」


 この物語、ここに切り取った部分だけでも切り口いいのだけど、この先の私が語る展開がさらに面白くて、そうとうつぼにはまった。
今となって、片岡義男の作品を読んだときに、子供の頃になぜあんなにも彼の作品に惹かれたのかよくわからないし、片岡義男の世界観にもちっともリアリティが感じられず、作品の中で語られるテーマについても深みがなさ過ぎて心に響かない。
やはり現実は片岡義男的ではないし、自分もまた、片岡義男の主人公でもないのだ、と思い知らされる。
ただ、自分の場合はサーフィンというものに巡り会えたことによって、片岡義男の作品が、このショートストーリーに出てくる彼ほどは、色褪せてはいないことに、そっと胸をなで下ろしたってのもちょっとあった。
う~ん、片岡義男ってなんなんだろ~、深いなあ…などと考え込んでしまっている今日この頃。
また、家に在庫有る片岡義男を片っ端から読んでみよう。
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